【Big Dataが生む社会的な価値について】from 関心空間ファウンダーブログ

2011年1月1日土曜日

 年末の初投稿になので、来年に向けて、景気の良い、スケールの大きな話をしましょう。ただし、大きいと言ってもデータのことです。最近、Big Dataと呼ばれる言葉を耳にしませんか?(情報爆発という日本語もありますが、これだと前向きなニュアンスがないので、ここではBig Dataと呼びます。)Big Dataとは文字通り「巨大なデータ」という意味なのですが、米国のIDCの調査によると、2009年に作成されたデータ量は、前年比62%増の0.8ゼタバイト(8,000億GB)だったそうです。ただ、IDCは、2020年には、世界で作成されるデータ量は35ゼタバイトに達すると予測しており、それらをすべて保存したDVDを積み上げると、火星までの距離の半分になるというのです。こんなにもデータが増大しているのは、インターネット利用者や利用量が増えているだけでなく、ユーザーが投稿保存している情報、ストリーミング情報、更にはそれらの利用履歴などをストレージするためのコストがHadoopやキー・バリュー型データストア(Facebookが開発した「Cassandra」等)によって大きく下がったのも要因です。皆さんの利用するサービスを例にすると、少し前にTwitterが一日に7テラバイト(例えると、人間の脳の記憶容量5.6個分、DVDが1500枚、CDが約11,000枚相当)を処理していると発表していました(もう今は10テラを超えています)。またeBayの場合は、それを更に上回り50TBのデータを処理するばかりか、それら商取引を行っているデータを直接リアルタイムに分析可能なAnalytics as a service(AaaS)を実現しているといいいます。また、SNSなどのユーザーアクティビティによって、業務改善を行うソーシャルBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)という言葉もあるようです。実はデータの増加傾向は加速する一方ですが、価値があるから増やすのではなく、捨てないで取っておくコストが低いから増えるだけであり、マーケッターにして見れば、事前にマイニングの対象を決めておかなくても後で処理が出来るのが魅力なのです。

 具体的にBig Dataが何に活用出きるかをご紹介しましょう。昨年10月英Financial Timesが、グーグルが世界中から集めてきた膨大なオンラインショッピングデータから、独自の景気動向指数として「グーグル物価指数(GPI)」の算出を社内で始めているとの記事を出しました。従来の「消費者物価指数(CPI)」のデータは各店舗から手作業で集められ、数週間遅れの数値が1カ月ごとに公式発表されているのですが、グーグル社チーフエコノミストのハル・バリアン氏は、オンラインの情報源を活用すると各種の経済統計がより迅速にデータ集計できることに着目したのです。もちろんCPIに含まれるがGPIでは取れないデータ(住宅関連消費や車関連等)もあるが、昨年のクリスマスシーズン以来、米国のGPIには「オンライン販売される商品に関して、極めて明白なデフレ傾向が表れている」といいます。また「英国では状況が全く異なり、若干のインフレ傾向が見られる」と分析。英国のGPI上昇はポンド安の影響だとバリアン氏はみています。そもそもグーグルの社内にチーフエコノミストという肩書きの人がいるのも凄いのですが、全世界のリテールを顧客にするグーグルにすれば、国別の景気を把握することで、収益予測だけでなく、いずれ広告やパートナー先への価格調整まで可能になるかも知れないということですね。

 さて「巨大」「景気」と来たので「美味い」で話を締めたいと思います。昨年10月14日に行われた「データ主導のビジネス変革セミナー」(主催ITpro、インフォマティカ・ジャパン)の講演で、カルビーのCIOを務めた中田康夫氏が「データ駆動型経営への挑戦」という講演を行いました。ここで最初に紹介されたのは「アッシェンフェルターのワイン方程式」と呼ばれる数式です。アッシェンフェルターというのは統計学者の名前で、ワインの品質を冬の降雨量、育成期平均気温、収穫期降雨量という3つのファクターでワインの品質を表すこの方程式にたどり着くまで、さまざまなデータを分析したとのこと。ワインの専門家は品質を調べるのにワインを仕込んでから3カ月くらい時間かかるが、この数式なら専門家でなくとも収穫時に品質が分かるらしいのです。そして、カルビーでもポテトチップスなどの原料となるジャガイモの品質を、同じように数式で導いているとのこと。「これがデータの威力。データを適切に使うと専門家を超えられる」ということだそうです。ともあれ、これまで、特定の専門家の能力に依存していた分析を、膨大なデータの統計分析によって置き換える試みがさまざまな分野で始まっていて、それらが経営の意思決定、ひいては世界の政治経済事情に影響を与えることになりそうです。

では、来年の皆さんの人生が大きな景気で美味しい生活になるようお祈り致します。
本年もどうもお世話になりました。来年も関心空間を宜しくお願い致します。

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